『これは経費で落ちません!』にハマったら人生初の恋人ができた話

27歳、彼氏なし。入社5年目の一人暮らし。

仕事とプライベートはきっちり分けたい派。

趣味は一人映画とセルフネイル。

いただいたお給料で時々自分にご褒美を買ったり、旅行に行ったりする。



これは、約1年前の私である。



そして、『これは経費で落ちません!』の主人公、"森若さん"との共通点でもある。




2019年7月期NHKドラマ

『これは経費で落ちません!』


とある会社の経理部を舞台としたお仕事ドラマでありながら、主人公 森若沙名子の"アラサー・人生で一度も恋愛経験なし"という、「これは私か?」という設定に心を掴まれ、ドラマが始まる前には当時出版されていた原作小説とそれを元にしたマンガを全て買って読み込んだ。


さらにドラマが始まるとどハマりし、同じ話を週の間に何度も繰り返し見た。



私は事務職ではないし、森若さんほどきっちりバリバリ仕事ができるわけではないが、就職して5年目となり、一応それなりに責任ある仕事を任されるようになっていた。


仕事に私情を挟むのは好きではないので、職場の人とは円満に付き合いながらもプライベートでの関わりは必要以上には持たず、淡々とやるべきことをやっていくことを優先した。

そのため、一緒に仕事をしたことのない人たちには、"怖そう"だとか"真面目"だとか思われているんだろうなと感じることもある。実際、初めて一緒に仕事をした人にはよくそんな第一印象の話をされる。


中身はただの20代で、可愛いものやカフェも好きだし、メイクやネイルも好き。映画や芸術や自然も好き。バンドもアイドルもお笑いも好き。

出勤時は仕事のことだけを考えている分、休みの日はできるだけ仕事のことは考えずに過ごしたいタイプである。


そして、彼氏がいない。

人生において、それまで一度も。



ただ森若さんと少し違うのは、合コンや紹介といった出会いの場には学生時代からそれなりに行っていた。決して徹底して恋愛を避けて通ってきたわけではなかった。

むしろ"みんなが経験している恋愛"というものには興味があったし、お付き合いを申し込まれたことも何度かはあった。


けれどもどこかピンとこず、実際にお付き合いするには至らなかった。ただなんとなく出会いの場に行き続けているうちに、あれよあれよと27年が経っていた。




ここで抑えておきたいのは、私には結婚至上主義/恋愛至上主義的な思考は全くないということである。

恋愛をして幸せなら、結婚をして幸せなら、してみたいとは思うけれど、そうでないなら無理してする必要は全くないと思っている。

人生における幸せは人それぞれで、いろいろな形があっていいと、今現在も思っている。


これは自分にも、他人に対しても、である。



だから、"27歳だから"といって"焦って"いたわけではない。


ただ、周りが結婚、出産、土地を買っただ家を建てただ、そういう会話をしている中で、何か漠然とした、もやもやした気持ちを抱えるようになっていた。

同世代の友人たちと比べてというよりも、それを"経験しないまま現状に満足している"自分に対して、そういう意味での焦りはあったのだと思う。



自分は今、何一つ不自由なく暮らしていて、満たされていると思っている。


でももしまだ知らない世界があるのならば、恋愛をすることでさらに満たされるものがあるのならば、自分だってしてみたい。


してみて、自分には違うなという結果になってもいいので検証してみたい。


そういう気持ちがあった。




さて、ドラマが始まると、主人公を演じる多部未華子さんがとにかく可愛くて引き込まれた。


原作小説を元に、ドラマとして少しオーバーに描写されたり、細々改変があったりしながらも、芯の部分はそのまま引き継がれているように感じた。


重岡大毅さん演じる山田太陽は沙名子よりも年下。小説よりも少し可愛らしい感じで、沙名子への押せ押せが小説以上に強い(笑)

現実にこんな人がいたら自分は引いてしまうなと思いながらも、正しいことも間違ったことも真っ直ぐ伝える姿は少し羨ましく感じた。



このドラマでは、仕事に関しても恋愛に関しても、心に刺さる言動がたくさんあった。


中でも、プロポーズのシーンは印象的だった。


会社が買収されるかもしれない、仕事がなくなるかもしれないと自身の立場に不安を感じ始めた沙名子。そんな時、2年の香港出張が決まった太陽が沙名子に突然プロポーズをする。


「仕事がなくなっても大丈夫、俺が稼ぎます。俺が食わせる。家に帰って沙名子さんの美味しいご飯があったら頑張れる。僕と結婚してください」(ニュアンス)


TwitterのTLは沸いていたが、私はもやもやが止まらなかった。


俺が稼ぐ?食わせる?沙名子に働くの辞めて家で家事してくれと?何故君がそれを決めるの?


案の定、次の話(最終回)の冒頭で、森若さんは「プロポーズされたけど、あんまり嬉しくなかった」と。


その時、ああ、私はこのドラマに出会えて良かったと心底思った。

今まで恋愛ドラマを見てもどこかハマりきれなかったというか、完全にフィクションとしてしか楽しめなかった。ここまでのめり込んで、自分に置き換えながら見れたドラマはなかった。

森若さんに出会えたことで、もっと自分のことを考えていいのだと思えたし、それを相手に伝えながら進んでいく道があるのだと知れたのだ。



ドラマは最終的に、太陽が「沙名子さん、一緒に香港に、来ないでください」「待っててください」と伝える。

「太陽くんに他に好きな人ができたら?」と不安な沙名子に、「できるわけないじゃないですか」と笑い抱きしめる。


うわーーー!!!最高だなあ!!!

オイ!!!!!!!


このドラマのいいところは、沙名子は決して強いわけじゃないところだ。プロポーズにもやもやしながらも、不安だってあるし、弱さだってある。

バリバリ最強!なキャリアウーマンでも、キラキラ朝ドラヒロイン風でもなくて、ほんとに世の中にいるひとりの社会人の女性をうまく描いていたと思う。



続編、待っています(どさくさ)




…ドラマ紹介記事みたいになってしまったけれど。(DVD&Blu-ray出てるのでよかったら見てください)




さて、7月期のこのドラマが終わり、完全にロスった自分は、半ば自分を森若さんだと思いこみながら相変わらず仕事に勤しみ趣味を充実させていた。


そして、自分が森若さんであるのなら(末期)、人生の中でいつか最高のパートナーに自然に出会えるかもしれないと、なぜかスーパーポジティブになっていた。

変な焦りはなくなり、出会いの場にも無理して行くことはなくなった。



変な気負いがなくなって明るくなったし、責任ある仕事に少し余裕が持てるようになった。

実際この頃から、表情や雰囲気を褒められることも増えた。



ロスが徐々に収まってきた頃、友だちに誘われて参加した飲み会で、ひとりの男性にご飯に誘われた。

年下で、恋愛経験が豊富そうだった。ドラマよりは小説版の山田太陽に近い。後輩気質で体育会系。明るく、誰とでも仲良くできるタイプだ。


普段の自分なら早い段階で、きっと話が合わないだろう、世界が違うだろうと切ってしまうような人だ。



けれどもその時の私は"自分は森若さんだ"と思い込んでいたので、ご飯だけなら行ってみようかなと思ったのである。



彼とは本当に色々な話をした。

仕事のこと、趣味のこと、家族のこと。

私の話を否定することなく、楽しく会話を広げてくれる姿がいいなと思った。


そして、そんな彼とお付き合いすることになった。人生で初めて、私に恋人・彼氏という存在ができた。



本当に私の恋愛レベルは新生児と同じだったので、その家族とも友だちとも違う関係性に、今まで経験のない感情を抱いて、一喜一憂しながらも、現在も仲良くしている。

彼は私に恋愛経験がないことに初めこそ驚きつつも受け入れ、適度に気遣いながらもありのままで接してくれる。

私もまた、彼の私にはない考え方や価値観に刺激を受けながら、自分を偽ることなく今を楽しんでいる。

お互いがお互いに優しい気持ちを持っていて、それがとても心地いいなと思う。



ずっと一緒にいられたらいいねと話すが、この先私たちの関係性がどうなっていくかは誰にもわからない。

コロナのことがあって、当たり前だと思っていたことが当たり前ではない現実も知ったし、お互いの家庭や仕事の影響で思い通りにいかないことだってある。


けれども私は、少なくとも今は、恋愛をしていて幸せだなと思っている。

色んなことがあるけれど、毎日楽しいなと思えている。

できることならこの先もずっと、彼を大切にしていきたいな、と思う。





森若さんたちに出会えなければ、そもそもこの人と2人で話してみようとは思わなかったかもしれない。

『これは経費で落ちません!』という作品に出会えて本当によかった。小説、漫画版は今でも続刊が出ると必ず購入して楽しんでいる。

青木祐子先生、森こさち先生、これからも応援しています!



そして最後に!やっぱり!

ドラマ続編いつまでも待っています!!!