陰謀論にハマる人の心理を考える

産休中の過ごし方と調べると、買い物をするとか、子どもがいたら行きづらい場所に行っておくとか、友だちとランチをするとか、そういうのが出てくる。

ただ、今はコロナ禍。感染症流行期。妊婦である私がコロナ陽性になると色々とややこしいので外出を控えている。

そんなコロナ禍妊婦である私の産休中の過ごし方のメインはズバリ、"陰謀論にハマる人観察"となっている。主な活動場所はTwitter。お産を控える人間としてとても健康的とは言えない過ごし方であることは自負している。

ただ、理由があるのだ。 親戚の中に、反ワク反マスクに傾倒したり、評判の良くない宗教の活動に参加したり、電磁波や添加物といったものを必要以上に恐れたりしている人が複数いる。積極的な交流を避けているが、今後の親戚付き合いのためにも、どうして陰謀論やトンデモ医学や怪しい宗教にハマってしまうのか、そしてそれを取り巻く環境ってどうなのか、知っておきたいと思ったからだ。

なのでこれはあくまでただのイチ妊婦の陰謀論界隈観察日記であり、誰かを強く批判したり傷つけたりしたいわけではないことだけ前提として書いておく。 何を考え、何を信じるかは人それぞれだから。

ただし、過激な反ワクチン自然派的思考により自分の子どもまでを危険に晒してしまう人とか人の弱みに漬け込んで大切なお金や財産を捲き上げるタイプのカルトやビジネスとかには嫌悪感を抱いている。

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コロナを機に、なんだか世の中には色んな人がいるんだなと思うことが増えた。ただでさえイレギュラーな環境。たしかに社会不安から思考や行動が変わってしまう人も少なくないだろう。

その中の目につくひとつとして、陰謀論がある。

陰謀論、と一言に言っても内容は多岐に渡るし、その実際もグラデーションであるのだけど。 反マスクとか、コロナはただの風邪とかそもそも存在しないとか、ワクチンで5Gに繋がるとか、DSがどうのこうのとか… 側から見ている分にはあーあで終わる。でも身内にいたらどうか?

親戚の中で1人、コロナを機にそちら側に傾倒した人がいた。

彼は根はとてもいい人なのだが、学生時代勉学に苦労し、なんとか入った大学も中退して以降定職にはついていなかった。一度決めたことをなかなか曲げられないタイプで、所謂社会のルールにハマれない。

彼の話は反マスクから始まって、メディアの嘘とか、社会の裏とかの話に発展した。彼はよく陰謀論と思える持論を親戚のグループLINEに載せた。突飛な内容も多かったが、何を考え何を話すかは自由だし、自尊心を傷つけまいと、周りのみんなは明らかな間違いはやんわり指摘しつつ基本は見守っていた。今思えば、指摘しても聞き入れられないだろうという諦めもあったと思う。

結果、楽に稼げるというビジネスに手を出してなけなしの財産を失ったのと、彼の名誉のために明言は避けるが一つもっと大きな失敗をしてしまった。

彼がそんなになるまでに、もっとできたことがあったんじゃないかと私たちは反省した。力ずくでももっと手前で止めていればと。 でも、一度陰謀論の沼にドップリと浸かった彼に、その最中にどんな言葉をかけても耳には入らなかっただろう。強い態度で出れば敵認定されて完全に弾かれていたとすら思う。 その時彼が求めていたのでは否定でも指摘でもなく、自分の主張への賛同であっただろうから。

さすがに失敗が大きすぎたのもあってか、彼は現在優しい人の救いもあり非正規ではあるが仕事を見つけ、少なくとも以前よりは落ち着いた。彼が陰謀論的思考から完全に抜け出したとは思えないが、多少はこたえたのではと思う。

彼を見ていて思うのが、根はとてもいい人で心は優しい。仲間を大事にする。素直でまっすぐ。ただ反面勉学が苦手で、難しいことを避ける。社会規範や苦労を避ける。一攫千金、一発逆転、そんな概念や言葉に弱い。

そんな彼の素直さと弱みに漬け込んだ相手が憎い。商材やもっと闇の深いものを売りつけ、彼のお金と名誉を奪うだけ奪って今もなお甘い汁を吸っている奴がいると思うととても腹立たしかった。

同時に、どれだけ仲がいいと思っていた親戚も救いにならなかったのだという切なさが残った。 近いからこそかもしれないが、わたしたちに彼は救えないのかという絶望。

この記事に近いものを感じた。 https://news.yahoo.co.jp/articles/8cc7709be7f5a70c8282567993ba25f6b5a06df4

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冒頭にも書いたが、陰謀論的思考にハマっている親戚は他にもいる。

1人は父方の祖母。 元々どこか思想的なところが強く、私は昔から少し苦手だった。子どもながらに、愛想はふりまきながらも、一定距離を取るようにしていた。

苦労人だったのは知っている。祖父はあまり体が強くなく、あまり仕事にも出ていなかったようで、祖母が働いて家計を支えた。子どもの持病の治療や通院も、親戚付き合いも、全て祖母が担当。 一方でほとんどを家で過ごす祖父は若いうちから痴呆がすすみ、70を過ぎると一気に認知症となった。身辺こそ自立していたものの支離滅裂な言動が限度を超え、祖母の精神面に影響を及ぼし、病院内の施設に入所することになった。

ただ、家族のしんどさと、皮肉にもそれまでの忙しさが急になくなった寂しさからか。祖母が友だちに誘われた宗教の活動に参加していると母から教えてもらったのはこの少し後の頃だった。 母にとっては義母にあたるが、母は「お義母さんが何を信じても自由ですが、この件に関しては私たち夫婦やうちの子どもたち含め他の親戚を勧誘することはやめてください」と伝えたと教えてくれた。 元々仏教(特定は避けるが真言宗とか浄土宗とかの類)のおつとめとかを熱心にするタイプで仏壇に向かってお経を読んでいる姿も見ていたが、それとは違う活動にも誘われて参加するようになったということだった。

一度、携帯の迷惑メールを削除してほしいと依頼された時、何件か明らかな迷惑メールを消した後、その友だちから転送されたと思われる宗教のメルマガ?のようなものを偶然見かけたことがある。「これはどうする?」と聞くと残しておいてほしいと言われた。

そこにあった宗教名を後々確認すると、公式サイトのほか、その宗教に家族や友人がはまって高額なお布施を払っていて困っている、というような相談内容のページが複数あった。 祖母が現在どこまでその宗教に加担し、お布施を納めているのかはわからないが、母が強く諭すレベルなので簡単に戻ることができない段階ではあるのだと思う。

もう1人は、間柄の明記は避けるが、私よりもかなり年上だ。もう60近いと思う。 昔は仕事もして、幼い私たちを遊びに連れて行ってくれる快活な人だった。学生時代にスポーツや勉学もそれなりに努力していたらしく、正規雇用のサラリーマンだった。 少し雰囲気が苦手なこともあったが、何か危ういことがあったわけでもないので、それなりに遊んでもらっていた。

転職し、一人暮らしを始めた頃だったか。徐々に「電磁波が」とか「食品添加物が」とかいう発言をし始め、交流が少なくなっていった。やがて体調を崩し、気づけば退職して実家に戻っていた。 その頃の私はまだ幼かったのでよくわかっていなかったが、今思えば仕事でトラブルか何かがあり、精神を病んでしまったのだと思う。あるいはその逆か。ただ、それまで何の問題もなく生きてきていたから、心身の不調の原因を何かに求めたくて何かを見て電磁波や添加物といったものに敏感になり悪循環に陥ったのでは、と推測している。(この人に関してはやりとりが難しいので憶測になる)

結果、まるで人が変わったように表情は暗くなり、現在に至るまでもう10年以上引きこもりを続けている。 家には撮り溜められた物凄い数のビデオテープが壁一面に収納されている。内容は映画や特集番組から宇宙や宗教ぽいものまで、あまりジャンルの偏りはみられないが、一体何の目的で撮り溜め、見ているのかはわからない。 鬱病の通院はしているみたいだが、頭が痛くなる、体調が悪くなると言って人との接触は避けているようだ。食べ物へのこだわりも強いようで、自分が決めたごく限られた食材だけを摂っている。同居家族とのトラブルも多い。 私たちがたまに持って行く土産物も、たぶん口にはしていないと思う。

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後半の2人に関しては、正直付き合うこと自体が辛くて、コロナを機にもうほとんど関わってはいない。 申し訳ないが、一緒にいるとこちらも負の気持ちに取り憑かれてしまい、早く帰りたいとしか思わなくなるからだ。

ただ、これも彼らを孤立させ偏った思考に追い詰めてしまう一因なのかもしれないと思い、葛藤している。 幸い両親が面倒を見てくれているのでまだいいし、孫レベルのわたしたちに両親も責任があるとは思ってもいないし何かを求めてもこない、むしろ交流を避けさせているような雰囲気も感じるので、下手に出しゃばらないようにはしている。

初めの彼はまだ私よりも若いので、これから思考を少しずつでも変えていけば、変われる気がする。

ただ、あとの2人を見て感じるのは人生半ばを過ぎて気持ちが折れてしまうと修正が難しいということだ。 2人とも私の幼い頃は活動的でまだ明るい雰囲気があった。しかし年々暗く、重い雰囲気を纏うようになっていた。

コロナに関して何か活動をしているわけではないので昨今界隈を賑わせる陰謀論とは直接関連はないが、彼らがもう少し若く、YouTubeやネットに中途半端に触れられる距離にいたとしたら、反ワクチン反コロナ過激派にハマってしまっていたのではと思う。

はじめにも書いたが、人が何を信じて何を考えるかは自由だ。コロナワクチンだって強要されてはいない。打つときには必ず説明書きや同意書の記入の必要がある。メリットデメリット明記されていて、自己判断できるはずだ。

その接種の有無で海外渡航以外のところで制限があるのは私だっておかしいと思うし、改善の余地もたくさんあると思う。でもそこでワクチンは危険!打つな!!と強いるのは自己判断を操作しようとしているのでワクチン打て!!って言ってる人と何ら変わらない。

そう、ワクチンで言えば打つな!!って人も打てよ!!って人もそう大差ない。

ただそこから思考によって人が分断されていく、偏りが出てくる、過度なデモやデマの流布につながっていく。 で、そこにあるのはほとんど善意、"良かれと思って"だとしても、そのトップにいる人はお金儲けやマインドコントロールが目的であることがある。 人の素直な気持ちや、ほんの小さな心の隙に入り込んで、人の大事なものを奪う。

陰謀論やカルトにハマる人の多くは、素直で、まっすぐで。あるいは今までの人生どこかうまくいっていなくて、大きな挫折をしていて、その理由を何かに求めたくて、馬鹿にしてきた人たちを見返したくて、一発逆転をしたくて。 "何者か"になりたくて。

難しい説明書きや科学的なものは、頭のいい人たち(→自分たちを見下し操作したい人たち)が提示する物だから、きっと騙してくるつもりだから、信じたくない。 それよりも、自分たちを認めて肯定してくれる仲間やリーダーの"直感"とか"経験"を信じたい。

自分は人とは違う。特別な何かに気づいた。みんなが知らないことを知っている。みんなと違う考えを持っている。

YouTubeで言っていたから、ネットにそう書いていたから、ウィキペディアに書いてあったから。

今までなかなか周りに馴染めなかった。仕事も続かず人との距離が掴めず。自分の居場所がなかった。でもこの人たちは認めてくれる。

心身の不調は、誰かの陰謀。自分たちを否定してくる人たちが自分たちを監視し、毒を漏らしている。だから戦わなければいけない。

こういう思考になっていってしまうのかな、と思う。

感染症流行は人の流れがある限り仕方のないことで、未知の感染症の研究や対策の試行錯誤はこれまでも歴史の中で繰り返されてきたこと。ワクチンの効能に絶対はなく、副反応があるのも、抗体値が時間と共に下がっていくのも、これまでのワクチンと同じ。

でも、個々人の人生は人類の歴史に比べると圧倒的に短いので、大切な人生の2〜3年の間に行動制限がされたり、マスクの着用を依頼されたり、そういった今までとは違うイレギュラーな環境に対するストレスが、それを別の何かに起因していると思いたくなる人たちをいつの間にか追い詰めていったのが今回のコロナ禍における陰謀論の広がりだと思う。

人間の心がいかにイレギュラーに弱いか。 それを今痛感している。

私もコロナ禍が始まってすぐは、エンタメ的にYouTubeの都市伝説系動画を楽しんだ。でも中にはそれを真に受けてしまう人たちがいる。 オカルトは楽しむ分にはただのエンタメだけど、信じ込んでしまうとあっという間にニセ医学やカルトの餌食になってしまう。

(今回コロナきっかけで、医師免許のある人もトンデモ医学を自費診療として高額提供する人がたくさんいるのだと知って怖くなってしまった。まあ医者もビジネスだし、みんなが風邪ひかなくなったら商売上がったりだもんな、、)

というわけで、ネットの陰謀論界隈観察はもう少し続けるけど、親戚たちには早く元気になってほしいし、今後あのナントカQ以降に過激な活動を行う団体が出てこないことを祈っている。

適切な感染症対策が残り、それ以外の楽しい日常が早く戻ることも期待している。